松原直子(1937~)
【略歴】
1937年 徳島県に生まれる(京都府京都市に育つ)
1960年 京都市立美術専門学校(現・京都市立芸術大学)デザイン科卒業
1962年 カーネギー工科大学(現・カーネギーメロン大学)大学院芸術科修了
1971年 カナダ・オークビルに活動拠点を移す
2011年 カーネギーメロン大学大学院「Distinguished
Achievement Award」受賞
【作家解説】
松原直子は木版画を中心に作品を製作した作家である。彼女の木版画との出会いは、京都市立美術大学(現京都市立芸術大学)在学中に遡る。初めて木版画にふれた当初は、その面白さには気付いたものの、生涯にわたって木版画を究めたいとは思わなかったという。しかしカーネギーメロン大学に留学中、コンサートの感動を木版画で表現したいという衝動に駆られたのをきっかけに、彼女は木版画の道を歩み始める。
彼女の作品の特徴として、画面いっぱいにあふれる力強さが挙げられる。彼女が敬愛した版画家である棟方志功の言葉を借りると、彼女の作品は「日本独自の木から生れる、刃物から湧く美の生命を、無量、多量に出しつづけて」いる。この背景には、彼女の幼少期の記憶が影響していると考えられる。彼女は子ども時代、彼女の父が宮司を務めていた神社の境内に生えていた松の姿を眺め続けていたという。彼女の精神の根底には樹木の力強さが息づいていると言えるだろう。
松原直子は、人生における様々な出来事を作品に昇華している。例えば彼女は1986年に行ったチベット旅行で、これまで親しんできた仏教寺院とは異なるチベット仏教寺院の鮮やかな色彩との出会ったことをきっかけに、抽象芸術への一歩を踏み出した。この一歩に至るまで、チベット寺院の印象を版画にすることに苦戦した彼女は「松原直子これで一巻の終わりか」と思うほどに絶望したという。しかし作品と向き合い続け、色と形を混同できないという真理にたどりつき、作家として新たなステージに踏み出した。また彼女はアメリカでの結婚・出産を通して、激しいホームシックとノイローゼに襲われている。そのような状況の中でも、彼女は版画作品を作り続けた。彼女は自分の人生を「年々歳々変化する生活そのものを教育として」発達してきたと表現している。この発達は、どれほどの苦しい状況の中でも木版画と向き合い続けるという、彼女の熱意の賜物であると言えるだろう。
【参考文献】
松原直子(2013)「教育と版画家への道」『教育心理学年報52』,184頁-192頁, 一般社団法人 日本教育心理学会

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