【コラム】ブログ(大人向け)班より ステップアップ式(?)博物館実習


 博物館実習には見学実習、館園実習、実務実習の3つがあるが、今回の実習はそのうちの実務実習である。春学期に開講される見学実習は様々な博物館を見学して、設備や展示上の工夫などを見つけ出していくものだが、館園実習と実務実習は、外から見ると内容に大差ないような感がある。展示の場所は同じ名大のclasだし、展示期間も1週間程度だし、対話型鑑賞があるし……。しかし、一つだけ、そして決定的に違うことがある。何かというと、館園実習は夏休み中の集中講義として短期集中型の作業であるのに対して、実務実習は10月から始めて学期中に作業を進めて、展示は2月初旬という長期戦だということである。そんなことかよ、とお思いの向きもあろう。しかし、作業する当事者としてはけっこう大きな問題である。というのも、学期中は授業や課題、院生だと加えて論文や学会発表など、自分の研究と並行して進めなければならないからである。夏にあらましを掴んで、学期中には実際の多忙な学芸員により近い形で実習をする、という段取りだろうか。そういえば、夏の館園実習と違って、今回の実習は企画案を全員が考えて、優れたものに投票する、という形式であった。そもそも集中講義で、全員が企画を練って投票するのは時間的に無理がある。

 ブログ班の業務内容は、ブログの運営のみならず、現地に設置するパネルや、美術とジェンダーに関する副読本の編集もある。パネルと副読本は班内で完結するが、ブログ記事は受講者全員に原稿を依頼する。稿者は、夏の館園実習も今回の実務実習も参加しているが(夏は総務班)、いずれもブログ記事や作品解説などを執筆している。夏は期日が短かったし、集中講義ゆえに他のことに煩わされずに原稿を上げられたが、今回はやはり他所事に頭が占められ、なかなかブログに手が回らないこともしばしばであった(そして、手が回せないという罪悪感もあり、そもそも仕事が残っていること自体ストレスである)。稿者の非力は認めるが、他の受講者も同様に、色々と日常と並行して諸作業を進めていたことは相違あるまい。

 学芸員は、俗に「雑芸員」と呼ばれるように、様々な業務に圧迫されている。もちろんその状況は改善が求められるが、それにしても実際の企画が日常業務と並行して行われることに変わりはない。実際の企画は何年も前から行われるというが、そのスケジュールで実習は出来ないから、34か月がちょうどいいのかもしれない。そう考えると、見学実習で色々な体験談を聞いたり、展示上の工夫を見たりしてから、夏休みの館園実習で展示の流れを大まかに掴み、秋学期で実際のスケジュール感を疑似体験するというステップアップになっていることに気が付く。細かな差異に見えようが、どのように仕事を片付けるか、他の仕事との兼ね合いを考えて行うというのが、本実習の最大の目的なのかもしれない。

N.M

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