【作家解説】星野美智子


星野美智子(1934~)

【略歴】

1934年 東京都杉並区に生まれる

1956年 東京女子大学文学部社会学科卒業

1963年 東京芸術大学絵画化油画専攻卒業、結婚

1964年 長男誕生

1965年 油絵初個展 銀芳堂画廊(東京)

1969年 次男誕生、倉敷市水島に転居

1970年 版画制作を始める

1972年 版画初個展

1973年 東京の元住居・アトリエに戻る

1976年 国展初出品、新人賞 「記憶の人・フネス」・アテネ画廊個展

1997年 ウォーターレス・リトグラフ研修(カナダにて)

2009年 山口源大賞受賞

 

【作家解説】

 1971年、版画といえばカラーが主流だった時代に倉敷にてリトグラフの制作を開始した星野美智子は以来モノクローム作品を発表し続けている。時計盤や薔薇などの具体的なモチーフに滲みやぼかしを重ね、瞑想的、緊密で壮麗な版画世界を提示している。また、リトグラフは独学で習得したもので、さらに石版からCGによるデジタルプリントまで版画技法の発展とともに様々な技法を果敢に取り入れている。

 星野といえばボルヘスの文学からインスピレーションを得た作品を多く発表している。本企画展出品作品〈フネスの鏡Ⅰ〉はボルヘスシリーズの最初期の作品である。ボルヘスの文学に出会う前から「場」「時」「記憶」の追求は星野のテーマであり、そのテーマを共有するボルヘス文学と出会ったことで論理を獲得し、その表現域がより広く、深くなったことが伺える。

 また、星野が学生時代を過ごした50年代後半から60年代は安保闘争、ウーマンリブをはじめとして社会変革の運動がなされ星野自身も影響を受ける一方で、実際の社会や美術界では女性の地位は男性よりも依然低いものであった。その中で二人の子どもを育てながらの作家活動にかかる苦労は想像に難くない。

 

参考文献

版画芸術182号 阿部出版 2018

版画芸術194号 阿部出版 2021

星野美智子全版画集19712006 阿部出版 2006

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